飛騨高山における「地域目線」の観光DX推進

 地域の課題解決に貢献する作品を表彰する「アーバンデータチャレンジ(以下、UDC)」において、商用サービスや学術研究にスポットを当てる「ビジネス・プロフェッショナル部門」。UDC2022の受賞者チームのプロジェクトを3回のシリーズで皆様にご紹介します。(第一回目の記事はこちら、第二回目の記事はこちら
 第三回目(最終回)の今回は、最優秀賞を受賞したチームの活動「観光DX推進2022 in 飛騨高山」!岐阜県高山市における地域に密着した継続的な観光DXの取組みに関する社会課題解決のポイントや活動の広がりについて、活動に取り組まれている「チームそしゃそやぞ」の堀様よりご寄稿いただきました。

最優秀賞
プロジェクト名:観光DX推進2022 in 飛騨高山

チームそしゃそやぞ
名古屋大学 大学院情報学研究科 安田・遠藤・浦田研究室 堀涼

こんにちは!
「チームそしゃそやぞ」です。
最優秀賞に選んでいただきありがとうございます。

 私たちは、高山市役所・地域事業者・NECソリューションイノベータ株式会社・名古屋大学安田・遠藤・浦田研究室のメンバーで構成された合同チームです。そしゃそやぞ、というのは高山の方言で「じゃあ、そういうことで」や「まあ、そんな感じで」という意味で、高山らしさを出す為にこのチーム名としました。

写真1:「チームそしゃそやぞ」集合写真

 本記事では、岐阜県の観光地の高山市で行っている観光DXの実現に向けた取り組みを紹介します。観光DXでは「データを活用した新たな観光のあり方」を定義しており、これに向けて、研究や実証実験等が行われています。しかし、地域で観光地を運営する人々に対しては、その恩恵がなかなか行き届いていないことを課題に感じていました。

 そこで私たちは、「地域目線」をポイントに観光DXを進めています。学生が実際に地域に入り込み、必要な仕組みの検討やその構築・実証を2019年から行っています。当時新設された人道橋の効果を測定する為、1台目のAIカメラを設置し通行量の計測を始めました。本取り組みは、高山の方々の多大なるご協力により今年度(2023年)で5年目を迎えました。AIカメラは14台に達し、2021年より毎年ワークショップや勉強会を開催させていただいています。また、開発したアプリのユーザ数が1万人を超えるなど規模を少しずつ拡大してきました。

 これらの活動の中で、高山では休日にお店が早く閉まり夕食を取れない観光客が存在する『夕食難民問題』や、人手不足で営業時間を最適化したいニーズがあることを知り、UDC2022でも発表した、通行量データを活用した最適な閉店時間の設定に辿り着きました。

写真2:連携店舗でのデータ分析結果の議論の様子

 また、データを活用した観光地には、私たちが利活用に取り組んでいる通行量データの他にも分析の為に十分なデータが必要です。例えば、街中での購買やホテルの宿泊といった観光客に関する情報、店舗の売上や地域のイベントといった観光地に関する情報などです。様々な立場の人が様々なデジタルツールを活用していくことが、便利な観光地を目指す点に加え活用できるデータを生み出すという点でも重要です。こういった理由で、毎年「ICTを活用したまちづくりワークショップ」を開催し地域で必要なICT利活用についての議論をしたり、不定期の「名大生と始めるデジタル勉強会」でデジタルを使いやすい土壌の醸成をしたりしており、累計で100名以上の地域の方に参加いただいています。

写真3:地域事業者を招いたデジタル勉強会の様子

 引き続き、「地域目線」の観光DXに取り組んでいきます!



■参考情報
 産官学の連携協定に関してはこちら
 名古屋大学安田・遠藤・浦田研究室のHPはこちら
 NECソリューションイノベータ株式会社のHPはこちら



(2023年8月 メールマガジン掲載)