断面交通量データを利用した交通流シミュレーション

断面交通量データを利用した交通流シミュレーション

上の動画は、交通流シミュレーションモデルSOUND[1]を適用し、東京大学生産技術研究所・大口敬教授を中心とした研究グループでの研究成果[2]を基に、断面交通量データでパラメータ調整を行った関東地方の交通流シミュレーションです。
断面交通量データとは、全国の都道府県警察が車両感知器などの計測機器で収集した断面交通量に関する情報を警察庁が取りまとめ、(公財)日本道路交通情報センター(JARTIC)が提供しており、G空間情報センターでは、断面交通量計測地点の位置情報を付加しAPI提供を行っております。
この交通流シミュレーションの動画をご提供いただいた、株式会社アイ・トランスポート・ラボの主任研究員花房比佐友様に断面交通量データの使い方についてインタビューさせていただきました。

- この度は、動画とその概要をご提供いただき、誠にありがとうございました。早速ですが、この交通流シミュレーションとは、どのようなものでしょうか?

花房:交通流シミュレーションとは、渋滞状況はもとより、事故や工事による交通規制等を設定することにより、よりリアルな交通状況を可視化するシステムです。提供させていただいた動画は、ある日の関東地方全域における午前4:00~翌日の午前4:00までの24時間の交通流をシミュレーションしたうちの一部です。

- 断面交通量データは、どのように利用されているのでしょうか?

花房:交通流シミュレーションのモデルは、数多くあります。こちらはSOUNDというモデルを使用していますが、パラメータの初期値でシミュレーションを行っても、それが実際と乖離している場合が多々あります。このため実測値である断面交通量データを利用し、パラメータの調整を行い、より現実に近い交通流を実現しています。

- 交通流シミュレーションは、どのように利用されているのでしょうか?

花房:交通流シミュレーションは、「バイパス道路新設時の都市部の渋滞緩和効果評価」や「災害時・イベント時の交通規制計画評価」はじめ、 自動車による様々な交通影響評価に使用いただけます。

- G空間情報センターでは、位置情報付きの断面交通量データをAPIで提供しておりますが、こちらはどのように利用できると思われますでしょうか?

花房:日本交通管理技術協会からも断面交通量データを入手できるのですが、こちらは観測地点の緯度経度情報がありません。このため、別売のデータと突き合わせる処理が必要となってきます。一方、G空間情報センターで提供されている断面交通量データには、観測地点の緯度経度情報が入っており、また、5分毎というほぼリアルタイムの交通量データがAPIで取得できるので、シミュレーションに取り入れることが可能で、非常に使いやすいと思います。

- 断面交通量データをシミュレーションモデルに取り込む以外、何か有効な利用方法はありませんでしょうか?

花房:各道路の交通量の実態が毎日把握できるため、長期間観測しながら道路の傷み具合を予測し、道路メンテナンスの計画に役立てることができます。また、集客イベントなど、特定の場所へ多くのクルマが集中する場合は日常の交通量パターンとは異なる場合が多いため、過去の経験(イベント時の断面交通量データ)を基に、今後交通の集中が予想されるイベントに対して、なるべく影響が少なくなるような来場経路や時間帯を検討に利用することが考えられます。

- お忙しい中、お時間頂戴し、ありがとうございました。

【使用データ】

【シミュレータ仕様】

シミュレーションモデル:交通流シミュレーションモデルSOUND
対象エリア:関東地方全域
シミュレーション時間帯:4:00~翌4:00(24時間)
車種:小型、大型
出力データ(集計単位は任意に調整可能):

  • リンク通過交通量(時間帯別、車種別、方向別)
  • リンク平均旅行時間(時間帯別、方向別)
  • リンク渋滞長(集計時刻別)
  • 車両走行履歴(車両ID、時刻、リンク上の位置、緯度経度からなる1台1台の走行履歴の情報)

※リンクは進行方向が定義されている有向リンク。

【参考文献】

[1] 吉井稔雄, 桑原雅夫, 森田綽之:都市内高速道路における過飽和ネットワークシミュレーションモデルの開発, 交通工学, Vol.30, No.1, pp.33-41, 1995
[2] 大口敬, 力石真, 飯島護久, 岡英紀, 堀口良太, 田名部淳, 毛利雄一:首都圏3環状高速道路における交通マネジメント評価シミュレーションの開発, 土木学会論文集D3 (土木計画学), Vol.74, No.5, I_1255-I_1263, 2018.

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