まちの将来像可視化プラットフォーム: My City Forecast

一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会
小俣博司
近い将来、本格的な人口減少と超高齢社会を迎える日本において、各自治体は都市の構造を見直し、持続可能なまちづくり(コンパクトシティ化など)を模索しています。しかし、長期的な都市計画には専門知識が必要であり、行政と市民の間にはまちづくりへの関心や理解度に大きなギャップが存在していました。

図1:背景
- 近い将来に訪れる人口減少社会の到来に向け地方自治体が都市構造のあり方を模索しており長期的な都市計画方針の見直しを行っている。
- しかしながら、地方自治体では市町村の都市計画策定において未だ地域データを十分に活用できていない実態がある。
- 都市公共インフラの再編を最適化するためには、都市の人口や世帯の分布について詳細かつ正確な予測を行うことが重要である。

図2:My City Forecast
この課題を解決し、市民と行政が対等な立場で都市の将来像について議論できるコミュニケーションツールとして、「My City Forecast」は、東京大学空間情報科学研究センター 関本・中居研究室が研究・開発を行い、一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会がサービスの提供・運用を行っています。
■ オープンデータで未来を可視化する「My City Forecast Ver.1.0」

図3:My City Forecast Ver.1.0
2016年にリリースされたVer.1.0は、国勢調査や公共施設、決算などの公開データ(オープンデータ)を活用したWebベースの都市将来像可視化・簡易シミュレーションツールです。全国のほぼ全ての市町村(1670自治体)を対象に、誰でも無償で利用できるよう公開されました。
Ver.1.0では、対象地域を500mメッシュに分割し、2015年から2040年までの居住環境の変化をシミュレーションします。人口推移や一人あたりの行政コスト負担、医療施設や学校、スーパーマーケットへのアクセスなど、14の指標を通じて、将来のまちの姿を定量的かつ直感的に把握することができます。
また、自治体などが持つ独自のデータをアップロードし、居住誘導エリアの設定や施設の撤退基準(閾値)といったパラメータを変更することで、将来像を再計算できる「カスタマイズ機能(有償)」も提供されています。この機能を用いたワークショップが全国各地で実施され、例えば水戸市の調査では、居住誘導区域への移転に否定的だった市民の6%が、ツールを利用したことで「額によっては移転可能」と前向きな態度に変化するなど、データに基づく対話が市民の意識変容を促す効果が確認されています。
■ 身近なスケールでリアリティを伝える「My City Forecast Ver.2.0」
Ver.1.0は全国で活用され一定の成果を上げましたが、500mメッシュという単位は市民にとって自身の生活圏としてのイメージが伝わりにくく、市町村境界付近での計算誤差が生じるといった課題がありました。これらを解消し、より身近なスケールで「未来のリアリティ」を伝えるためにアップデートが施されたのが「My City Forecast Ver.2.0」です。

図4:My City Forecast Ver. 2.0
1.より身近な「小地域」への移行と、高度な「世帯推移モデル」の導入
Ver.2.0の最大の特徴は、分析の単位を500mメッシュ単位から、より生活実感に近い「町丁・字(小地域)」レベルへと変更した点です。これにより、「〇〇町〇丁目」の未来がどうなるのかを直接的に確認できるようになりました。
さらに、将来予測の裏側にあるモデルも高度化されています。従来の単純な人口推移(コーホート予測)だけでなく、世帯をエージェントとした「世帯推計データ」を新たに開発しました。出生や死亡はもちろん、家族の成長に伴う世帯の転出・転入といった移動までを確率で計算する「世帯推移モデル」を構築したことで、2015年から2040年までの地域の姿をより高い精度で予測することが可能になりました。
2.複雑なまちの課題を紐解く「10の政策テーマ」
多様なまちの課題を整理するため表示する指標も更新されました。Ver.2.0では政策分野ごとに「10の政策テーマ」に切り替えて表示するようになりました。
アイコンを選択するだけで、それぞれのテーマに応じた指標が地図上と表で可視化されます。
10テーマ(政策)
(1) 都市計画:小地域ごとの人口や建物数、居住誘導区域の人口割合
(2) 交通政策:バス路線数や、バス停・駅のエリアカバー率、想定されるバスの運行費用
(3) 観光政策:年間来訪者数や観光資源、宿泊施設の数
(4) 人口政策:65歳以上(高齢者)や14歳以下(子ども)の人口割合
(5) 公共施設計画:公共施設や学校の数、その維持管理にかかる費用
(6) 医療福祉政策:医療施設、病床、介護・福祉施設の数
(7) インフラ政策:道路や河川の延長距離、橋梁の数
(8) 防災計画:避難所数、洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域に含まれる人口
(9) 農林政策:農地や林地の面積割合、農業産出額
(10) 住宅政策:世帯数や推定空き家率、建物の平均築年数
※このほか、経済政策のテーマも追加が検討されています。
3.未来の変化を体感する直感的なUI/UX
Ver.2.0では画面デザインや操作性も更新されています。地図は「2.5D」で立体的に俯瞰でき、建物の形状や階数までもが詳細に表示されるため、実際の街並みをイメージしやすくなっています。
シミュレーション結果は、「2015年の現状値」、このままの傾向が続いた場合の「そのままの都市構造」、そして居住誘導などの対策をした場合の「計画された都市構造」の3パターンが、自治体全体と小地域ごとに並列表示され、政策の効果を一目で比較できます。
さらに、2015年から2040年までの5年ごとの変化を、再生ボタンを押すことで1.5秒間隔のアニメーションとして自動遷移させることができます。人口減少によって将来維持が難しくなる施設に「✕マーク(消滅可能性)」がついていく様子が地図上で表現され、地域の変化を視覚的に共有することが可能です。
■ 全国対応の手軽さ
Ver.2.0は、国勢調査や国土数値情報といったオープンデータを活用することで、全国1,672自治体、約21万の小地域に対応しています。My City Forecastは無償で手軽に高度なシミュレーションを利用できる点が大きな強みです。行政と市民が同じデータを見ながら未来を「自分事」として考え、根拠のある対話を生み出すための「まちづくりのプラットフォーム」として利用することが可能となります。
■MyCityForecastに関する情報
MyCityForecast 有償プラン
https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/mcf
MyCityForecast 概要資料
・Ver.1.0(カスタマイズ機能含む)
https://v1.mycityforecast.net/media/mcf_2017_overview.pdf
・Ver.2.0
https://mycityforecast.net/static/docs/mcf_v2_202208_r3.pdf
■本件お問い合わせ先
G空間情報センターお問い合わせフォームで、お問い合わせの分野「My City Forecast」よりお問い合わせください。
https://front.geospatial.jp/inquiry/
(2026年7月 ニュースレター掲載)