リアルタイム災害情報提供システムのご紹介

一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会
大伴真吾
一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会(以下、AIGID)では、2019年より大規模災害が発生した際に、状況把握・救難・復旧・復興に資するリアルタイム災害情報の提供を行っています。本取り組みをさらに発展させるため、2024年7月からは、発災後最短24時間以内に各種民間データを公開する社会実験を開始しました(ニュースレター第49号参照)。本稿では、この続報として実施状況及び機能改善などを紹介します。
1.社会実験稼働実績
2025年度に実施した社会実験は次の2回でした。
(1) 令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨
8月8日未明、鹿児島県では線状降水帯が繰り返し発生し、24時間降水量が500ミリを超える記録的豪雨となりました。これにより土砂災害の危険性が著しく高まり、霧島市に大雨特別警報が発表されました。
これを受け、8月8日より鹿児島県を対象に社会実験を開始し、協定先の民間企業へデータ提供を依頼するとともに、リアルタイム災害情報提供システム(以下、RTDS)を稼働させ、Web地図情報の提供を開始しました。
その後、九州北部においても9日夜から11日にかけて同様の現象が発生し、福岡県および熊本県では400ミリを超える大雨となりました。熊本県内の複数市町に特別警報が発表され、災害リスクが極めて高まったことから、対象範囲を熊本県へ拡大しました。
提供データとしては、通行実績データおよび人口統計データ(発災日から6日分)、航空斜め写真(3社・43枚)を収集・公開しました。なお、本社会実験に参加する研究会メンバーのうち、熊本県で災害対応に従事された方へのヒアリングでは、特に斜め写真が被害状況の把握に有効であったとの評価を得ています。

図1:令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨時のWeb地図情報画面
(2) 令和7年12月8日青森県東方沖地震
12月8日23時15分頃、青森県東方沖を震源とするマグニチュード7.5の地震が発生し、八戸市で最大震度6強を観測しました。これに伴い、北海道から東北太平洋沿岸に津波警報、宮城県・福島県など広域に津波注意報が発表されました。また、7道県182市町村を対象に「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が初めて発表され、厳重な警戒が呼びかけられました。
本事象に対し、12月9日より北海道・青森県・岩手県・宮城県を対象として社会実験を開始し、データ収集・提供およびRTDSの運用を実施しました。提供データは、通行実績データおよび人口統計データ(発災日から6日分)、航空斜め写真(1社につき10枚)です。
本災害では、人的・住家被害はほとんど確認されず、後発地震注意情報の発令期間中にも顕著な地震活動は見られませんでした。なお、航空斜め写真の提供については、被害が確認されない状況での公開に関して検討があったものの、後日、有識者および行政関係者から「被害がないことを確認できた点で有意義であった」との評価が寄せられています。

図2:令和7年12月8日青森県東方沖地震時のWeb地図情報画面
なお、RTDSの稼働時、コンテンツの追加時にX及びFacebookに投稿を行っています。G空間情報センターをフォローいただくことで、最新の情報提供状況をご確認いただけます。
2.システム機能の改善
RTDSの災害時における利便性向上を目的として、以下の機能追加および改善を実施しました。
(1) スライドショー機能
スライドショー機能は、最新の地図コンテンツを巡回表示する機能で、災害対策本部などのモニターで常時表示しておくような利用場面を想定して設けた機能です。

図3:スライドショー機能
(2) レイヤの表示期限終了の可視化
データ提供会社との契約により、データによっては地図の表示有効期限があります。これまでは、データの表示有効期限が過ぎると、そのデータのレイヤを削除していたため、データが提供されていたことがわかならい仕組みでした。そこで、表示期限が経過したレイヤをグレー表示することで、提供はしていたが有効期限が過ぎたことを明示するように改善しました。
(3) 自動データ収集・変換処理強化
災害時にはできるだけ早く情報を伝えることが必要です。そこで、これまでは人手により協定先から提供されたデータを取得、Web地図表示できるデータ形式への変換作業を行っていましたが、この作業を自動化しました。これにより、Web地図表示までの処理時間を30分から60分以上短縮することができ、さらには人手による作業がなくなったため、作業者の負担軽減を図ることができました。
3.データの追加予定
RTDSでは、さらなる情報拡充を目的として、以下のデータの追加を予定しています。
(1) IoT家電情報
シャープ株式会社のスマート家電から収集した稼働データの提供契約を同社と東京大学空間情報科学研究センターとの間で結び、AIGIDがデータを処理、RTDSのWeb地図コンテンツとして提供することになりました。このデータは、同社のスマート家電の利用数を郵便番号単位で集計したもので、平常時と災害時の利用数を比較することで、停電しているかどうかを推定することができます。
(2) DiMAPS
DiMAPS(https://dimaps.mlit.go.jp/dimaps/index.html)とは、国土交通省が提供する統合災害情報システムで公開されている震源・震度、インフラ・交通被害などの災害データです。このデータの特徴は、国土交通省が把握した被災箇所、被災概況を高い頻度で更新されることです。
(3) アメダス
アメダス(AMeDAS)は気象庁が運営する地域気象観測システムの略称で、全国約1,300か所に設置された無人観測機器で気温や降水量を取得、Webでデータを提供しています。このデータをRTDSでも取り扱うことにしました。
以上のデータは、いずれも次回のRTDS稼働時から提供する予定です。
この他にも災害時に役立つデータを、随時追加していきます。
■本件お問い合わせ先
民間事業者によるリアルタイム災害情報提供研究会事務局
Mail:disaster-info@aigid.jp
(2026年5月 ニュースレター掲載)