書籍『緊急支援物流と道路ネットワーク-災害に備えるインフラ整備-』の紹介

株式会社 建設技術研究所
内田 大輔
我々(株)建設技術研究所では、12月15日に「緊急支援物流と道路ネットワーク」という書籍を大成出版社より発売しました。その紹介をさせていただきたいと思います(下図)。

図1:本書の表紙
近年、日常会話でも「物流」という用語を頻繁に耳にします。「物流2024年問題」という言葉のとおり、物流の危機が日常的に報道で取り上げられることも影響しているのでしょう。物流が便利な日常生活を支えていることは、まぎれもない事実ですが、災害時においては、さらに物流の重要性は高まります。
我が国は世界でも珍しいほどの災害大国であり、地球上で発生する大地震の約5分の一は日本で起きています。約100年前の関東大震災や30年前の阪神淡路大震災、21世紀に入ってからは、東日本大震災、熊本地震、そして昨年の元日には能登半島地震が発生しました。そして近い将来において、南海トラフ地震や首都直下型地震の発生が予想されています。
地震以外でも、台風や線状降水帯による被害が毎年のように発生しており、時には噴火や風害なども起きています。
これまで我々は、大災害に見舞われると、日常生活の場が奪われるだけでなく、被災者に食料品や生活用品などの物資が必要になることを経験してきました。災害時という経験を活かし、普段から物資の補給や備蓄について考えておく必要があるでしょう。特に、備蓄に限りがあるならば、被災者の生命を守り生活を維持するためにも、物資を補給するための「緊急支援物流」が極めて重要なはずです。
しかし、過去の災害では、道路の破断や通行不可が緊急支援物資の輸送を妨げていたことが幾度もありました。だからこそ被災時の緊急支援物流のためにも、道路の強靱化を進めなければなりません。国土交通省では、道路土工構造物の点検や道路防災点検を実施し、重要物流道路を指定しています。また、災害時の応急対策として道路啓開計画を進めています。これらの対策は、我が国にとって必須のインフラ整備と考えられます。
一方、道路啓開後であっても物資供給拠点間の輸送や避難所への配送が課題になることも我々は経験してきました。このため、現在進められている道路啓開計画をさらに一歩進め、被災時の物資供給拠点や避難所を想定し、より細やかな道路ネットワークについて強靱化を進めていく必要があると考えられます。
我々(株)建設技術研究所では、緊急支援が必要となる生活物資のサプライチェーンやライフラインの実態を把握するとともに、災害時における緊急支援物流とそのための道路ネットワークのあり方について研究に取り組んできました。この研究成果を、冒頭でご紹介しました「緊急支援物流と道路ネットワーク」という書籍に取りまとめました。
本書は、自然災害が多い我が国において、災害時の緊急支援物資の供給に焦点を当て、これを実現するために不可欠な道路ネットワークの計画を考えていくものです。すなわち、災害時に生命と財産の安全確保のために、最初に避難や救助を行うことになりますが、次に避難や救助後に生命を維持するためには、生活物資のサプライチェーンや供給処理などのライフラインの確保が不可欠になります。本書はこの点に着目して、そのために必要不可欠なインフラとしての道路ネットワークの強靱化を考えたものでございます。
本書は、4部構成になっています(下図)。

図2:本書の構成
第一部は、「災害と緊急支援物流」として、我が国における災害の特徴と、緊急支援物流を考えるものであり、第1章(我が国における災害と防災対策)、第2章(ロジスティクスと緊急支援物流)から成っています。
第二部は、「サプライチェーンとライフラインの防災対策」として、生活物資のサプライチェーンと供給処理のライフラインを扱っています。具体的には、第3章(生活物資のサプライチェーンと防災対策)にて、5品目の生活物資(食品、日用品、医薬品、燃料、廃棄物)を取り上げ、第4章(ライフラインの防災対策)にて、5つのライフライン(上水、下水、電力、ガス、情報通信)を取り上げています。
第三部は、「緊急支援物流のための防災対策」として、道路と都市の施設の防災対策を扱っており、第5章(緊急支援物流を支える道路の防災対策)、第6章は(緊急支援物流を支える都市の施設の防災対策)から成っています。
第四部は、「緊急支援物流のための道路ネットワーク」として、災害時の緊急支援物流のための道路ネットワークの強靱化を扱っており、第7章(緊急支援物流のための道路ネットワーク構成)、第8章(緊急支援物流と道路ネットワーク分析)から成っています。
この書籍が、自治体や道路管理者のみなさんの災害対策の一助になれば幸いです。
■本記事に関するお問い合わせ先
株式会社建設技術研究所 東京本社 交通システム部 内田大輔(uchida@ctie.co.jp)
(2026年1月 ニュースレター掲載)