デジタルツインが拓く、空間情報の新たな可能性

ESRIジャパン ソリューション営業グループ 課長
石井 洋平
1.空間情報とデジタルツインの融合
近年、都市やインフラの管理において「デジタルツイン」という概念が急速に注目を集めています。これは、現実世界のモノやプロセス、関係性を仮想空間上に再現する技術であり、GIS(地理情報システム)との融合によって、空間的な文脈を持つ高度な情報モデルの構築が可能となります。
ArcGIS は、こうしたデジタルツインの基盤として、建物情報モデル(BIM)、ネットワーク情報モデル、都市情報モデルなど、複数の情報モデルを統合・接続する機能を備えています。これにより、単一の施設から都市全体、さらには自然環境までを対象とした包括的なモデリングが実現できます。
たとえば都市計画においては ArcGIS Urban を活用することで、設計者や行政担当者がシナリオベースの計画を立案し、影響評価をリアルタイムで行うことが可能です。また、ArcGIS GeoBIM は、BIM と GIS の連携をワークフローのレベルで支援し、建設プロジェクトに関わる多様な関係者が、地理空間の文脈に基づいて情報を共有・分析できる環境を提供します。

図1:GIS とデジタルツインの相互接続
2.リアルタイムデータと予測分析の力
IoTセンサーやリアリティマッピング技術との連携により、現場の状況を高精度に把握し、リアルタイムでの監視や予測が可能です。ArcGIS Velocity を活用すれば、ストリーミングデータの処理・分析・通知までを一貫して行うことができ、設備や施設運用の最適化に貢献します。
たとえば送電線と樹木の接触リスクを自動検出し、保守作業の優先順位を最適化する事例では、GeoAI による画像解析と機械学習が活用されています。これにより、年間数千時間分の作業時間を削減できます。
また、ArcGIS Reality や Field Maps などのツールを活用することで、現場でのデータ収集やリアリティキャプチャが容易になり、現実世界の状況をフォトリアルな3Dモデルとして再現できます。これらのデータは、都市景観やインフラの変化を視覚的に把握し、環境モニタリングや災害対応にも活用できます。

図2:デジタルツインのライフサイクル
3.持続可能な未来に向けた情報基盤
デジタルツインは、単なる3Dモデルではなく、データの取得・統合から、分析・予測、共有・協力までを支える情報ライフサイクル全体を包含する概念です。ArcGIS はこのライフサイクルを支えるエコシステムとして、現場とオフィス、行政と市民、設計者と運用者をつなぐ「デジタル神経系」の役割を果たしています。
都市規模の取り組みにおいては、スマートシティやスマートコミュニティの実現に向けて、都市情報モデルの活用が進んでいます。そのため、ArcGIS によるシナリオ計画は、住民との関係性を深め、持続可能な都市設計を支援する強力なツールとなっています。

図3:米国マサチューセッツ州ボストンにおける2D/3Dデータを統合したデジタルツイン
以上のように ArcGIS は、空間的な文脈をもとに、複雑な情報モデルを統合し、誰もがアクセスできる環境で、リアルタイムの状況認識と意思決定支援を実現します。これからの社会において、デジタルツインは単なる技術ではなく、持続可能な未来を築くための戦略的な基盤となると考えています。
■本記事内容に関するお問い合わせ先:
ESRI ジャパン株式会社 お問い合わせ窓⼝
(2025年11月 ニュースレター掲載)