大規模災害時に迅速に民間データをWeb地図提供する社会実験のご紹介


一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会
大伴真吾

 一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会(以下、AIGID)では、2019年から大規模災害が発生した際に、状況把握・救難・復旧・復興に役立てていただくためにリアルタイム災害情報を提供しています。この取り組みをさらに拡大、2024年7月から最短で24時間以内に各種民間データを公開していく社会実験(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000027.000069280.html)を開始しましたので、この取り組みについて、ご紹介させていただきます。

 これまでのリアルタイム災害情報は、事前にデータ提供契約を結んだパイオニア株式会社の車両通行実績データ、航空写真測量会社の朝日航洋株式会社、アジア航測株式会社、国際航業株式会社、株式会社パスコから航空斜め写真データを提供してもらっていました。
 特に、航空斜め写真データは、各社のご厚意で提供いただいており、災害が発生してからデータ提供までの時間や提供写真の数量は各社にお任せ、データの2次利用も各社それぞれのライセンスが設定されており、継続性や使い勝手に問題がありました。

 このような中で、東京大学空間情報科学研究センターが、2023年に戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期の課題「スマート防災ネットワークの構築」において採択されたサブ課題A「災害情報の広域かつ瞬時把握・共有」の研究開発機関となり、「産官学連携による評価・検討用プラットフォーム構築の研究開発」を開始、AIGIDが協力機関として参加しました。そこで、これまで民間データの収集・利用の課題を解決するために、これまでのデータ提供契約内容の見直しを各社と協議の上行いました。見直しのポイントは、発災後にできるだけ早いタイミングで、かつ、十分なデータの数量を提供いただくために、提供までの時間に応じた対価をAIGIDが支払うことにしました。ただし、この協定を結んだからといって、必ずデータを提供しなければならないというものではありません。さらに、各社提供データの2次利用ライセンスの内容、手続き方法がバラバラでわかりにくかったため、わかりやすい言葉で表現、手続きも可能な限り少なくしました。

 さらに、株式会社ドコモ・インサイトマーケティングと協定を結び、人口統計データであるモバイル空間統計の提供を受けることになりました。モバイル空間統計は、ドコモの携帯電話ネットワークを使用して作成される人口の統計情報で、500mメッシュ単位の、1時間ごとの人口のデータです。このデータをWeb地図として表示することで、どの場所で人がどの程度滞留しているかを把握することができます。

 このような仕組みを設け、できるだけ早く民間データを収集、Web地図情報として提供するのがこの社会実験です。

 2025年4月時点で大規模災害時のデータ提供協定を結んでいる民間企業とのその内容は次のとおりです。なお、ここでいう大規模災害とは、県域範囲で被害が及ぶような災害で、情報提供の開始はAIGIDが判断します。


*1 利用者・目的限定:AIGIDが主催する「民間事業者によるリアルタイム災害情報提供研究会」メンバーに限り、当該災害関連分析目的で利用できます。
*2 目的限定:研究目的に限って申請なしで利用できます。
*3 要許諾申請:提供者に利用申請を行い、許諾を得る必要があります。

 社会実験の開始を始めてから、大規模災害が2回ありました。令和6年7月25日大雨災害では秋田県と山形県を対象に、令和6年9月21日能登地方大雨災害では石川県を対象にリアルタイム災害情報提供を行いました。

図1:災害モード時のG空間情報センターのトップページ

図2:車両通行実績データ、人口統計データ及び航空斜め写真データを表示した例

 それぞれの災害時において、車両通行実績データと人口統計データは、翌日午前10時までには前日の24時間分のデータを地図情報として配信することができました。航空斜め写真は、被災地の救難捜索状況や天候によって航空機が飛行できる機会がその都度変わりますが、発災後50~100時間以内に合計200枚以上収集・公開することができました。車両通行実績データと実行統計データは、協定に従って現時点ではWeb地図情報として閲覧はできませんが、航空斜め写真は、過去の災害分も閲覧することができます。

 このように、民間企業が持つデータを、発災時にできるだけ早く収集し、Web地図情報として提供する社会実験は、一定の成果を得ることができました。今後は、引き続き社会実験を通じて取り扱いデータをさらに増やすとともに、リアルタイム災害情報提供サイトを被災自治体、被災者あるいは支援者など、関係する多くの方々に見ていただき、現状把握や復旧・復興に役立てていただきたいと考えています。そのための手段として、これまで以上にSNSを効果的に使ってのタイムリーな情報発信も行ってまいります。

■本件お問い合わせ先
民間事業者によるリアルタイム災害情報提供研究会事務局
Mail:disaster-info@aigid.jp

(2025年5月 ニュースレター掲載)

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