地域共同で利用可能なデジタルツイン環境となるデジタルシティサービスの拡張とデジタル版BIDの構築

一般社団法人 社会基盤情報流通推進協議会
岩崎 秀司
1.デジタルシティサービスとは
一般社団法人 社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)は、これまでのG空間情報センター等の運営に加え、デジタルツイン環境の提供により都市全体の管理の高度化を図る「デジタルシティサービス」を2020年6月にリリースし、順次バージョンアップを進めています。「デジタルシティサービス」は、自治体ごとに保有している多様なデータをG空間情報センターと連動した形で保管・管理するとともに、3D地図上で可視化等を行うことが可能なデジタルツイン環境です。また、自治体が防災分野や都市計画分野等の施策検討の際に必要となる共通的な機能を実装した地域共同で利用可能なクラウド型のサービスです。
これまで自治体は独自にWebサイトを立ち上げ、個別にデジタルツイン環境を提供していました。その為、専用のシステム環境やコスト面での負担、また利用者にとっては利用したい自治体を都度探す手間等、様々な課題がありました。これらの背景を踏まえ、「デジタルシティサービス」は同一プラットフォーム上での利用サービスを目指し、2020年度に発足した自治体や有識者が参加した「デジタルスマートシティ研究会」での議論を経てバージョンアップを図りながら、ついに2023年4月に全国の自治体での利用が可能となり、公開を始めました。
また、2023年からは、全国約15団体の自治体と関係省庁などの有識者が参加する「都市アプリケーション連携実装研究会」を発足し、デジタルシティサービスを基軸としたデジタルツイン環境の構築を目指すための議論や開発状況の共有を行い、自治体業務で普段使いできるサービスに向けて拡張を図っています。
図1:デジタルシティサービストップページ(https://www.digitalsmartcity.jp/)
2.デジタルシティサービスの機能と特徴
デジタルシティサービスは、各都市の公共施設やインフラに関するデータ・都市計画・ハザードマップなどの情報を3次元都市空間上でスムーズに可視化が可能となります。また、自治体での施策を検討する際に有用な「擬似人流データ」や「登記所備付地図データ」などの多様な地理空間情報を全国の全ての自治体ごとに閲覧することが可能です。
また、本サービスは自治体の職員だけでなく、住民や地域に関係する団体等も閲覧することができます。まちの状況を分かりやすく可視化することで、まちの課題や今後のまちのあり方を住民参加のもと、検討していくための重要な役割を担うことが可能となります。
図2:擬似人流データの可視化例(デジタル玉名)
図3:登記所備付地図データの可視化例(デジタル茅野)
3.デジタルシティサービスを活用したデジタル版BIDの構築
生成AIや3D都市モデルなどの技術的視点やデジタル田園都市国家構想などの政策変化により、地域におけるデジタル化が社会的に求められていますが、基礎自治体の独自対応は人的・経費的負担が大きく、また、補助金依存やベンダー依存になりがちで地域コミュニティが抱える課題を十分に反映できていない状況です。そのため、地域ごとの特性に応じて実態に即したサステナブルなグランドデザインを描きにくい状況になっています。
そこで、小規模の自治体においても地域課題の解決に向け持続可能な取り組みが行えるように、デジタルシティサービスをプラットフォームとして、地域の行政・事業者等が資金を分担し自立的に地域改善を行う「デジタル版BID※」の構築を目指しています。現在は、デジタル版BIDの構築を目指し、静岡県裾野市・富山県南砺市で地域の行政・市民・事業者が主体的に活動する「地域デジタル協議会」を両地域でそれぞれ2023年に立ち上げています。
※デジタル版BIDとは
地域に関わる人々が行政に頼ることなく自主的に計画を定め、資金を分担して地域改善を行っていく活動であるBID(Business Improvement District)の考え方を参考に、デジタルデータを活用しながら地域課題を解決する仕組みです。
図4:デジタル裾野協議会の運営イメージ
静岡県裾野市・富山県南砺市の両地域では、地域のデジタル化に興味がある人材を結びつけることを目的に、地域に深くかかわるキーパーソンの皆さんと地域のDXの実践例などをディスカッションしながら学ぶ「デジタル裾野の輪」・「デジタル南砺の輪」や、デジタルシティサービスを活用しながら地域課題の解決に向けた各種「プロジェクト」をそれぞれの現地事務局が主体となり進めています。今後は、デジタル版BIDの実践に向けて、両地域の相互交流を図るとともに、新たな地域での協議会の設置に向けた活動を推進していく予定です。
図5:地域のDXの実践例などのディスカッションの様子(デジタル裾野の輪の例)
図6:デジタルシティサービスを用いたまちづくりの検討例(富山県南砺市 五箇山三次元データ整備プロジェクト)
4.今後の展開
デジタルシティサービスは、自治体の課題・ニーズを確認しながら、デジタル田園都市国家構想の政策などに合わせて、都市の課題解決につながる様々なアプリケーションやシミュレーションとの連携を目指して、自治体の施策検討などに普段使いできる真のデジタルツインとしての機能を強化していく予定です。デジタルシティサービスの今後の展開や取り組みにご期待ください。
「デジタルシティサービス」や「都市アプリケーション連携実装研究会」の取り組みにご興味のある自治体の方は、下記お問い合わせ先にお気軽にご連絡ください。
■ご案内(お近くの方・ご興味ある方はぜひご参画ください)
・デジタル裾野協議会公開シンポジウム 2月24日(月) 午後 詳細はこちら
・デジタル〇〇の輪Facebookでは、各種イベント告知・報告を掲載しています。
デジタル裾野の輪Facebook・デジタル南砺の輪Facebook
■本件お問い合わせ先
デジタルシティサービス事務局 Email:cpod-info(アットマーク)aigid.jp
(2025年1月 ニュースレター掲載)