自治体のインフラメンテナンスの課題を解決し、市民協働の意識を高める「My City Report」のご紹介

一般社団法人 社会基盤情報流通推進協議会
My City Reportコンソーシアム事務局長
松島 隆一
1.はじめに
自治体には、道路の損傷や公園遊具の破損・ゴミの放置や落書き等、日常生活における様々な地域の課題「こまった」が寄せられています。これらの多くは電話により受け付けられ、職員自らが現地に赴き状況を確認のうえ対応をしています。また道路の損傷については、職員が日々パトロールを行い発見に努めています。一方で、少子化による急速な人口減少と高齢化の進展のなか、自治体には、従来の半分の職員でも自治体が本来担うべき機能を発揮できる仕組みが必要として、「スマート自治体への転換」や自治体が新しい公共私相互間の協力関係を構築する「公共私によるくらしの維持」が求められています。(*1)
今回ご紹介する「My City Report」が目指すのは、市民参加を促し合理的・効率的にまちの「こまった」を解決するための、市民投稿機能やAI等を用いた道路管理機能を含む市民協働プラットフォーム。住民と自治体、AIがタッグを組むことで、住みやすいまちづくりに貢献します。
*1 「自治体戦略2040構想研究会 第二次報告 〜人口減少下において満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するか〜」(平成30年7月。総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000562117.pdf
2.My City Reportとは?
「My City Report for citizens」
住民がまちの「こまった」を発見した時、スマートフォンで気軽に投稿できるサービス
「My City Report for road managers」
これまで自治体が目視で行っていた道路の損傷確認業務をAIに置き換え、正確でスピーディな道路損傷検出ができるサービス
これら2つのサービスの総称がMy City Reportで、利用自治体で構成する「My City Reportコンソーシアム」が運用しています。
3.市民協働投稿サービス(My City Report for citizens)
「My City Report for citizens」は、住民がまちで見つけた道路の損傷や公園遊具の破損などの地域の「こまった」を、自らのスマートフォンにインストールした専用アプリで写真と位置情報などを投稿することで自治体と情報共有し、自治体と市民が協働して対応するためのサービスです。
図1:市民と「こまった」を共有する仕組み
(1) 情報の透明化
市民から自治体に寄せられた情報が電話によるものだった場合、正確に把握しにくい・記録が残らない・容易な情報共有ができないといったリスクがあります。「My City Report for citizens」なら24時間受付可能でLINEにも対応可能です。また、写真と位置情報付きで投稿されるため複雑な情報も把握しやすく、状況とコメントを含めたレポートを一般に公開することで情報の透明化が可能です。さらに、職員が電話応答で仕事を中断することもなくなります。
図2:従来の通報等との違い
(2) まちの「こまった」を解決する便利な機能
・自動振り分け機能
「My City Report for citizens」のアプリから投稿されたレポートは、場所やテーマ毎にそれぞれの担当部署に自動で割り振られます。レポート到着時に担当者にメールで知らせる機能もあります。
・情報を一元管理
電話・メールなどの市民からの通報、職員によるパトロール結果など、複数の情報源から寄せられた「こまった」を一元管理できます。解決までのステータス管理もできるので、対応状況の管理も楽々です。
・管理画面のレポート一覧表示
担当部署用IDで管理画面にログインすると、担当部署に自動で振り分けられたレポート一覧が表示されます。またCSV一括出力やレポートをPDFとして印刷することもできます。
投稿された課題に対する自治体の対応については、逐次自治体から投稿者にその状況が通知されるとともに、原則、公開されます。
図3:システムの概要図
(3) 使い方はいろいろ!
道路に穴が開いている・公園の遊具が壊れている・廃棄物があるなど、まちのさまざまな「こまった」を担当部署で一元管理できるだけでなく、まちなかでのゴミ拾いなど市民が自主的に解決した課題に関するレポートを求めること(かいけつレポート)も可能です。自治体がテーマを決めてイベントとして投稿を求めれば(テーマレポート)、住民と自治体のコミュニケーションツールにもなり、コミュニティの活性化にも役立ちます。
図4:レポートの種類
「ちばレポ」の愛称で「My City Report for citizens」を活用いただいている千葉市様で行なったアンケート(*2)では、ちばレポを良い仕組みと思う割合が97.8%、市の対応に満足している割合が73.4%、まちを見る意識に変化があった割合が74.7%(いずれも2019〜2023年度の平均)となっており、自治体の活動や対応に対する住民の納得感や市民協働意識の醸成にも寄与している結果となっています。
*2 「ちばレポアンケートについて」
https://www.city.chiba.jp/sogoseisaku/shichokoshitsu/kohokocho/chibarepo-questionnaire.html
(4) 利用自治体
2024年10月末現在、「My City Report for citizens」を使用している自治体は、以下の31団体となります。
東京都、神奈川県、和歌山県、那須塩原市、千葉市、鎌ケ谷市、印西市、白井市、千代田区、港区、品川区、大田区、世田谷区、杉並区、葛飾区、国分寺市、国立市、福生市、多摩市、稲城市、加賀市、能美市、あわら市、塩尻市、筑北村、富士市、みよし市、高島市、尼崎市、和歌山市、東広島市
4.道路損傷検知サービス(for road managers)
道路損傷検知サービスは、専用アプリをインストールしたスマートフォンを自動車のダッシュボードに設置しパトロールすることにより、アプリが自動的に道路の損傷箇所を検出し、損傷画像とその位置情報をサーバにアップロードするサービスです。
(1) 道路巡回業務の悩みを解決します
道路損傷検知サービスは、道路損傷による事故を未然に防ぎたい道路管理者向けに開発されたもので、自治体などの道路管理者が抱えるさまざまな課題を解決します。
・こんな課題ありませんか?
図5:道路巡回業務の課題
道路が長大なため巡回に時間がかかりすぎる、専門職員が不足している、という声は少なくありません。また、道路の修繕要望が非常に多く、優先順位や範囲を決め難いという課題もあります。これまでのように職員の主観で補修の緊急度を判断していたのでは、客観性に乏しいという点も課題です。補修箇所を委託業者に伝える手間がかかっている、という悩みもよく聞きます。
・損傷検知3つのポイント
図6:道路損傷サービスの主な特徴
1つ目のポイントは、アプリをインストールしたスマートフォンを車に載せて走行するだけで運用可能なこと。2つ目は、道路の損傷状況の自動検知。個人の判断によるばらつきのない客観的なデータが残せます。3つ目はWEB管理画面で簡単に確認&共有でき、作業指示書として出力も可能です。
(2) WEB管理画面で業務クオリティ・効率アップ!
道路に損傷個所があると、車内に取り付けたスマホアプリが自動で検知・撮影されます。これらの画像データは自動でアップロードされ、WEB管理画面でわかりやすく可視化されます。
・管理画面から損傷の状況管理が可能
アカウントを共有すれば、離れた場所にいる補修担当者とWEB管理画面で対応状況を共有できます。対応状況のステータスも表示できますので簡単に共有管理できます。
図7:管理画面イメージ
・検知した損傷の帳票出力
損傷状況を帳票として出力できるので、作業指示書として委託業者への依頼もスムーズに対応できます。対応状況ステータスの変更で、補修依頼状況等もわかりやすくなります。
・損傷の大きさ推定
損傷個所(ポットホール・亀甲状ひび割れ)の撮影画像から、損傷の大きさを推定することが可能です。WEB管理画面で損傷の大きさを表示できます。
図8:損傷の大きさ推定
・簡易的な路面評価
区間ごとの損傷数をカウントして色分け表示することで、損傷が激しい道路を可視化することもできます。これにより、道路修繕計画を立てる際、経験や勘のみに頼らずデータに基づく検討ができ、限られた予算内で効率的な修繕計画を立案できます。
図9:簡易的な路面評価
(3) 新機能「路面評価」をリリース!
「My City Report for road managers」では、「損傷検知」に続く新機能として2024年7月に「路面評価」をリリースしました。
スマートフォンで取得した動画像と加速度データから、国が定める指標(ひび割れ率、IRI、MCI)に基づいた路面性状評価を行うサービスです。
従来の路面性状調査と比べて、以下の点が特長となります。
・低コスト:測定専用車両が必要なく、大幅なコスト削減を実現します。
・高精度:AI技術を用いて解析を行うため、従来の調査方法と同等の精度で路面性状を評価することができます。
・簡便性:スマートフォンで簡単に操作できるので、特別な知識や技術は必要ありません。
・効率性:データ収集と分析を短時間で完了できるので、路面状況を迅速に把握することができます。
限られた予算の中で路面性状調査を実施したい、迅速かつ効率的に路面状況を把握したい、測定専用車両の導入が難しい、路面性状調査の負担を軽減したいなどでお困りの自治体におすすめです。
(4) 利用自治体(2024年10月末現在)
2024年10月末現在、「My City Report for road managers」を使用している自治体は、以下の14団体となります。
東京都、神奈川県、和歌山県、熊本県、盛岡市、花巻市、港区、品川区、目黒区、世田谷区、調布市、大津市、尼崎市、総社市
5.My City Reportコンソーシアム
地域課題に関する市民の声を積極的に拾い、市民参加を促すための市民協働プラットフォーム「My City Report」を普及促進し参加地域・団体の課題解決を図ることを目的に、利用団体を構成員として2019年に設立されました。My City Reportの利用に向けた整備・運用及び支援や、利用促進に向けた普及活動を行っています。
コンソーシアムでは、会員自治体の業務に適した形で各サービスの機能向上が逐次行われており、多くの自治体参加による負担按分効果と併せ、効率的なサービス提供が行われています。
図10:コンソーシアムの組織図
6.最後に〜自治体の皆様へ〜
はじめに述べたように、自治体は将来の人口縮減に対応するための大きな課題を抱えており、道路などのインフラの維持管理においても、新たな技術を用いた抜本的な業務改革や市民・事業者等との協働による新たな枠組みでの取り組みが求められています。
「My City Report」では、利用自治体によるコンソーシアムを組織しそれぞれの自治体の経験や叡智を集め、サービスの機能向上や普及促進を行っています。本稿を読んでいただいた自治体の皆様にはぜひこのコンソーシアムに参加いただき、皆様のご経験や知識も「My City Report」に注ぎ込んで、住民と自治体・AIがタッグを組んだ住みやすいまちづくりを一緒に行うことをご検討いただければと思います。
なお、「My City Report」サービスの利用検討に当たっては、以下の無償の試験利用プログラムを設けています。この機会にぜひご利用いただき、効果を確認のうえ導入をご検討ください。
・My City Report for citizens
1〜3か月間の試行運用環境による試験利用(東京都、神奈川県、和歌山県、熊本県の自治体においては、2025年3月末までの最大半年間の無償利用キャンペーンを実施中)。
・My City Report for road managers
1か月の道路損傷自動検出の試験利用(東京都、神奈川県、和歌山県、熊本県の自治体においては、試験利用期間を3か月に延長する無償利用キャンペーンを実施中)。
「My City Report」の取り組みにご興味のある方、導入を考えてみたいという方は、My City Reportコンソーシアム事務局までお気軽にご連絡ください。
■参考(再掲)
*1 「自治体戦略2040構想研究会 第二次報告 〜人口減少下において満足度の高い人生と人間を尊重する社会をどう構築するか〜」(平成30年7月。総務省)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000562117.pdf
*2 「ちばレポアンケートについて」
https://www.city.chiba.jp/sogoseisaku/shichokoshitsu/kohokocho/chibarepo-questionnaire.html
■本件お問い合わせ先
My City Reportコンソーシアム事務局
Mail:mcr-info@aigid.jp
(2024年11月 ニュースレター掲載)