自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD) 対応における空間情報技術の適用 ~まずは事業活動を通した依存・影響の見える化から~

国際航業株式会社 防災環境事業部
気候変動戦略研究室 山本 美紀子
1.目指すのは、自然にポジティブな影響を与える企業への資金流入
2022年からのパイロットフェーズを経て、今年の9月18日に自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の最終提言が公表されました。TNFDは、企業が自社の事業活動がどのように自然資本・生物多様性に依存し、影響を与えているか、またそうした相互関係の結果生じるリスク・機会からどのような財務インパクトを受ける可能性があるか、さらにリスク・機会の評価を踏まえた戦略的対応を開示する枠組みです。その根底にあるTNFDの狙いとは、これまでの自然に対してネガティブなビジネスモデルを、ポジティブなものに移行させていく企業に優先的に資金が投入されるようにすることです。
2.自社の活動と「自然との接点の発見(Locate)」に期待されるGISの活用
TNFD対応の最初の一歩となるのが、バリューチェーンを含めた自社の活動拠点の中で、自然への依存関係や自然に与える影響が大きく、リスク・機会への対応が優先的に求められる場所の把握です。この優先地域の特定には、生物多様性の重要性が高い、生態系の劣化が著しく進んでいる、あるいは水リスクが高い、また地域コミュニティが享受している生態系サービスの観点から重要であるといったことから特定する必要があり、その評価に地理情報システム(GIS)が活用できます。
出所:TNFD ”Recommendations of the Taskforce on Nature-related Financial Disclosures”の図24より作成。
図1:TNFDの対応ステップと自然関連の評価指標および開示指標の構成
3.自然関連の影響評価における国際航業のアプローチ
GISの活用例としては、原材料を調達している農園や加工工場周辺の森林保護エリアを可視化したり、森林減少や森林伐採の状況を把握したりして、ホットスポットを抽出するといった取り組みが挙げられます。
図2:当社が提供する自然関連の影響評価(マッピング)の例
4.金融機関系シンクタンクとの協業
国際航業は、みずほリサーチ&テクノロジーズ社と企業の自然資本・生物多様性対応を支援する「みずほネイチャーポジティブ・デザイン」の提供を開始しました。本サービスの提供により、食品・飲料、化粧品、化学メーカーなど自然資本を活用した事業を行う企業における持続可能な原材料調達やトレーサビリティ確保の強化などの取り組みの促進を支援してまいります。
図3:「みずほネイチャーポジティブ・デザイン」のサービス概要
■関連情報
「自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)最終提言公表」(国際航業レポート 2023.10.25)
https://www.kkc.co.jp/service/blog/environmental-solution/report/article/16035/
衛星とGISで自然情報開示を支援、国際航業がTNFD対応サービスを開発(日経クロステック/日経コンストラクション 2023.05.17)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/01591/
■ 国際航業株式会社が提供するTNFD関連サービスのお問合せ
Seminar_Hojin@kk-grp.jp
(2023年11月 ニュースレター掲載)