G空間データを用いた製造業における物流課題の意思決定支援

株式会社構造計画研究所
オペレーションズ・リサーチ部
部長 指尾 健太郎
株式会社構造計画研究所(以下、当社)では、社会の構造を模擬(モデリング)した仮想空間で様々な施策を評価(シミュレーション)する「社会シミュレーション」の手法を用いて、社会課題の解決に向けた意思決定をご支援しています。
本記事では、G空間データと、最適化およびシミュレーション技術を用いて、製造業の物流課題に対する意思決定を支援した事例をご紹介します。
1.オペレーションズ・リサーチによる物流効率改善の取り組み
オペレーションズ・リサーチとは、数学的モデル・統計分析・最適化・シミュレーション等の手法を用いて、ビジネスや産業における意思決定や問題解決を支援する技法・研究分野での技法のことです。
物流には、調達・在庫・輸配送等多くの改善観点があり、効率化には様々な手段が存在します。実際の物流業務においてネックになっている部分を認識し、自社の物流戦略や運用に合った施策を選ぶことが重要となります。
当社はオペレーションズ・リサーチの専門家として、顧客の複雑な物流課題を分析し、複雑な制約条件を満たしつつ最小の資源で最大の効果を得るためのソリューションを提供します。
表:オペレーションズ・リサーチによる物流の課題解決アプローチ例
事例紹介:製造業の物流拠点新設のための立地評価及び配送エリア割り当て評価
大規模な物流拠点の新設と配送担当エリアの見直しを検討している顧客に対し、多角的視点から最良の物流拠点候補地を検討します。さらに、想定される中間財や完成品等の配送需要の変動による物流コストへの影響を評価する仕組みを提供しました。
図:物流拠点候補地の評価結果例
物流拠点・配送エリアの見直しにあたり、様々なコストや将来のリスクを考慮して検討を行う必要となります。コストの例としては、初期費用や設備維持・更新費、工場からの輸送費・顧客配送費を含む運用費用等が挙げられます。またリスクの例としては、道路混雑状況、将来の取扱量の変動等が挙げられます。さらに、物流業界では2024年に施行される働き方改革関連法によるドライバー不足等様々な課題が予想されており、これらの影響を想定して拠点候補地を選定する必要があります。
このような課題に対し、当社では多岐にわたるG空間データを用いて、物流拠点選定および配送ルート策定の局面を対象に、コストメリットと将来の需要変動リスクヘッジを両立させる最適解の探索をご支援しました。図は物流拠点候補地の評価例です。様々な評価軸を考慮して、顧客にとっての総合的な物流拠点としての好ましさ(ポテンシャル)を評価しました。
ポイント1. 現状のコスト体系を可視化
・配送品の流通経路と各輸配送コストを整理
・全体のコスト構造(固定費・変動費)を定量的に評価
⇒拠点間の配送品の移動頻度の増加等、コスト増加の要因を把握することで運用ルールの見直しに貢献
ポイント2. 実態に即したコスト構造を用いて拠点候補地を定量的に評価
・人口・地価・配送コストなど多面的評価軸で各拠点候補地を評価
・数理計画法(与えられた制約の内で費用・リスク等の目的値が最小となる解を、数学的アプローチで求める手法)を用いて各拠点間を最小コストで運べる最適な紐付けを求め、担当エリア見直しのための評価分析を実施
⇒候補地・担当エリア設定の妥当性を定量的に評価、納得度の高い意思決定を支援
ポイント3. シミュレーション検証によるロジスティクスシステムの評価
・配送品の需要は日々変わるため、顧客自身が継続的に物流システムを評価・分析できるシミュレーション環境を構築・提供
⇒中長期的な物流改善施策の評価で活用、継続的な物流コストの低減を実現
図:様々な評価軸を考慮した物流拠点候補地の意思決定
物流は、企業が経済活動を行う上で欠かせない時間・空間を結ぶプロセスの一つであり、G空間データとも密接な関わりがあります。今回ご紹介した内容にご興味ある方は、ぜひ下記関連Webサイトをご参照いただき、お気軽に当社までお問い合わせください。
弊社では、今後もG空間データを活用して社会の物流課題改善に貢献できればと考えています。
■ 本記事内容に関するお問合せ先:
構造計画研究所 オペレーションズ・リサーチ お問合せフォームよりご連絡ください
https://operations-research.kke.co.jp/contact/
■本記事内容関連ウェブサイト:
物流拠点新設のための立地評価及びエリア割り当て評価
https://operations-research.kke.co.jp/logistics/facility-location/
■荷主のための物流情報サイト KKE Logi Hub
https://logistics.kke.co.jp/
■物流OR事例
https://operations-research.kke.co.jp/logistics/
■LOGISTICS TODAY 構造計画研究所、科学的アプローチで挑む物流課題
https://logistics.kke.co.jp/logistics-consulting/220630-scientific-approach/
■取り扱う情報:
・基本道路:デジタル道路地図データベース
・配送コスト:顧客提供データ
・地価:顧客提供データ
・人口動態:国立社会保障・人口問題研究所の人口動態データ
(2023年3月ニュースレター掲載)