国土交通データプラットフォームにおけるデータ流通・利活用促進の取り組みについて


ESRIジャパン株式会社
プラットフォームソリューショングループ
櫻井 洋祐



1.国土交通データプラットフォームの現状と課題
 国土交通省大臣官房技術調査課では、国土交通に関わるデータの利活用を促進するためのデータ連携基盤「国土交通データプラットフォーム」の整備を進めており、2022年9月現在、ver. 2.1を公開中です。
 利用者はサイトの閲覧やデータのダウンロードが可能ですが、データの取り込みや加工などの準備に手間や時間を要し、利活用に際してのハードルとなっています。また、他省庁システムにおいてAPI経由でのデータ提供を進めているケースもありますが、APIを利用したGISシステムへの実装には利用者側に高いITスキルが求められます。
 このような課題に対し、利用者(特にGISユーザー)がデータを簡単に利活用できる仕組みとしてGIS Webサービス※が注目されています。この気運の高まりを受け、国土交通省大臣官房技術調査課では、「GISコミュニティ利用実証ポータルサイト(以下、実証サイト)」を試験的に公開し、国土交通省が保有する地理空間情報の利用促進にGIS Webサービスが有効か確認する実証を行っています。
※ GIS Web サービスとは、GISデータや空間的な情報処理などをネットワーク経由でWeb サービスとして提供する技術の総称です。

 
図:国土交通データプラットフォーム図:GISコミュニティ利用実証ポータル画面



2.GISコミュニティ利用実証ポータルサイト
 今回構築された実証サイトには、弊社が提供するクラウドGISサービス「ArcGIS Online」およびオープンデータサイト構築キット「ArcGIS Hub」が使用されています。特長の一つとして、本サイトの構築にあたりコーディングは一切行っておらず、メニューを選択するのみでさまざまな機能が提供可能なことが挙げられます。GISユーザーは、利用実証ポータルサイトを通じて、国土交通データプラットフォームの主要なデータの検索・閲覧、GIS Webサービスとしてのデータ利用およびダウンロード等ができます。


図:利用実証ポータルサイトの利用イメージ

GIS WebサービスでGISデータが公開されることによるメリットは以下の通りです。
(1) GISデータ全体をWebサービス連携で簡単に利用できる(上図の“GIS Web サービス”)
(2) ArcGISやQGISなどのGIS Webサービスに対応したソフトウェアが提供されており、GISデータ利用のための利用者側での開発が不要となる
(3) GISデータの閲覧だけでなく解析等にも利用できる 

 加えて、GIS Webサービスでは、これまでのデータをダウンロードする方式では対応の難しかったリアルタイム性の高い動的なデータ(気象データ、センサーデータ等)も扱えるため、これまで以上にさまざまな分野での利用シーンが広がっていくと考えられます。
 今回の利用実証において実施されたGISユーザーやソリューションサービスプロバイダへのヒアリング調査でも、GIS Webサービスの必要性や利活用が容易になることへの期待が寄せられました。


図:GIS Webサービスの利用イメージ



3.海外の動向と今後に向けて
 欧米では、政府機関が公開するデータカタログサイトとは独立した “ジオポータル”と呼ばれる、GISデータに特化したデータカタログサイトが公開されています。ジオポータルを運営している各国では、公的なデータカタログサイトのコンテンツ(メタデータ、エンドポイント等)をジオポータルに自動連携し、GIS Webサービスを含めた多様な提供方法をサポートすることで、官民に亘る地理空間情報の利活用促進が図られています。
 日本でもこのような取り組みが進み、GISデータがより使いやすく活用されていく社会となるよう、弊社でも引き続き地理空間情報の流通に資する技術の提供や普及活動に努めて参ります。



■利用実証ポータルサイトに関する問い合せ先
 ESRIジャパン株式会社 お問い合わせ窓口





(2022年9月号ニュースレター掲載)