伝統産業×ITで美濃焼の地域ブランディングを推進する活動

 地域の課題解決に貢献する作品を表彰する「アーバンデータチャレンジ(以下、UDC)」において、商用サービスや学術研究にスポットを当てる「ビジネス・プロフェッショナル部門」。UDC2021の受賞者チームのプロジェクトを3回のシリーズで皆様にご紹介します。
 第一回目は、優秀賞を受賞した「CODE for GIFU」のプロジェクト!社会課題解決のポイントやこれまでの活動の広がりについて、ご寄稿いただきました。

優秀賞
プロジェクト名:伝統産業×ITで美濃焼の地域ブランディングを推進する活動


CODE for GIFU
石井哲治

 “伝統産業”は、昔から続く技法を使って、日本の文化や生活に根ざしたものを生み出す産業を指します。伝統産業により製造された“伝統的工芸品”は、①日常生活で使われるもの、②主要な部分が手作りであること、③伝統的技術や技法、原材料を使っていること、④一定の地域産地が形成されることなどが「伝統工芸品産業の振興に関する法律」によって規定されています。

 美濃焼の起源は奈良時代の須恵器からとされており1300年の歴史を誇ります。また、日本で生産されている陶磁器の半数以上が美濃焼です。美濃焼の最大の特徴は、その作風の多種多様さにあるといわれています。伝統技法を継承しつつ、改良を加え、その時代の好み(トレンド)に合わせて様々な形や色の焼き物が作られてきており、「黄瀬戸」「瀬戸黒」「志野」「織部」などどこかで聞き覚えのある名前ではないでしょうか。

 美濃焼の種類は、伝統的工芸品に指定されているだけでも15種類におよびます。また、陶磁器には器からタイルなど多種多様な製品があるため、製品自体の良さや特徴を示す「モノ軸」だけでは文化的な背景を含む美濃焼の価値を伝えづらくなってきており、利用者の視点にたった「コト軸」での伝え方の転換が求められていました。そこで、CODE for GIFUでは、「セラミックバレー美濃構想」という美濃の焼き物とその文化をリブランディングし、産業・地域を活性化する取組みをされている方達と、ITを活用したPRプロジェクトを2021年からの4か年計画で開始しました。生産者の目線からだけでなく利用者・ユーザ目線を取り入れるために、アプリケーションの開発等はデザイン指向のアプローチで実施しました。陶磁器の国内生産の半分のシェアを誇る岐阜(2017年工業統計)だからこそできる「美濃の環境」と「IT」を活かした地域活性を目指しています。

 PRプロジェクトは、2021年9月に立上げ、キックオフしました。その後、①石川県能美市の九谷焼オープンデータ活用事例の学習(9月)、②「伝統産業×ITでできること」のワールドカフェの開催(10月)、③RESASによる美濃地域の可視化(10月)、などの取り組みを経て、「データを作る分科会」と「イメージを広げる分科会」の2つの分科会を立ち上げ、活動を深化させていきました。同年11月には、美濃焼の産地の一つである多治見市にて、美濃焼の文化を体験するフィールドワークを2つの分科会合同で開催するなど、意欲的に取り組んでいます。
 

写真:美濃焼の登り窯の特徴について窯元から説明を受けている様子



・データを作る分科会
  美濃焼に触れてもらう機会を増やすため、セラミックバレーに関する観光・お店・陶器等の約1,000地点のデータを収集してOpenStreetMap等に登録しました。また、そのデータを活用したロゲイニングアプリ(スマホのGPSを活用して情報を集めて楽しめるアプリケーション)を開発しました。アプリは現在は開発途中の段階ですが、今後、アプリを通じて、ゲーム感覚で美濃焼の産地の知識を増やすことができるようなイベントを展開していきます。


図:美濃焼に関する観光のためのロゲイニングアプリイメージ



・イメージを広げる分科会
 美濃焼の新たなファンの開拓、新たな魅力の創造など、イメージを広げるための「美濃焼×ナウシカ」を企画しました。アニメ『風の谷のナウシカ』では、土の無いセラミック(陶器)の世界が描かれており、美濃焼とアニメの世界観のコラボレーションによる相乗効果を目指しています。具体的には、セラミックの世界観を利用して①ARによる虫の群れなどの展示品の案内、②セラミックによる砂漠の再現等を実現していきます。


図:ナウシカの世界観と陶器を掛け合わせるアイデア

 PRプロジェクトでは、アイデアの実現に向けて地域の方達と対話しながら進めていきます。CODE for GIFUでは「伝統産業×IT」の取り組みを引き続き発信していきます。皆さんと一緒に伝統産業や伝統的工芸品を知り、産業・地域を活性化していきたいと思います。ご興味がありましたらFacebookページのフォロー、または、メールにてお問合せください。



参考情報
 セラミックバレー美濃構想

 伝統産業×ITプロジェクト



お問合せ
 CODE for GIFU
 担当:石井
 メールアドレス:cfgifu@gmail.com
 ホームページ: https://codeforgifu.jp/
 Facebook: https://www.facebook.com/code4gifu

(2023年5月ニュースレター掲載)