地域DXを支える「デジタル南砺協議会」と「デジタル裾野協議会」

 近年、全国の自治体でデジタル技術を活用した地域課題解決の取り組みが加速している。人口減少や高齢化、公共サービスの維持、地域産業の活性化など、地方が抱える課題はますます深刻化・複雑化しており、従来の行政施策だけでは対応が難しくなっている。こうしたなか、地域住民・企業・行政・大学が連携し、デジタルを共通言語として未来を描く「地域デジタル共創」の動きも広がっているのも事実だ。一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会(AIGID)でも、この分野で取り組んでいる、富山県南砺市の「デジタル南砺協議会」と静岡県裾野市で進む「デジタル裾野協議会」がある。今回はこれらの活動についてご紹介したい。

1.デジタル南砺協議会:市民が主体となる学びと実践のコミュニティ

 「デジタル南砺協議会」は、富山県南砺市と東京大学生産技術研究所が2019年に締結した包括連携協定を起点に生まれた。協定に基づき発足した「デジタル南砺研究会」は、地域の課題を地理空間情報とともにデジタルで可視化し、解決策を議論する場としてゆるやかに活動を継続。2023年度からは、地域企業や市民が主体となり運営する「デジタル南砺協議会」に改組し、より地域に根ざした活動へと進化している。

画像1:気象データマッピング(デジタル南砺)

 活動の中心となるのは、オンラインで開催される定例会だ。人口構造・公共施設・農地・道路・気象など、多様な地理空間データを活用し、地域の現状をAIGIDが運営するデジタルシティサービス「デジタル南砺」上に可視化する取り組みが進む。参加者は市民・地域団体・企業・行政職員など多様で、データをもとに地域の未来像を議論する。特に、地理空間情報を活用した課題発見やデジタル技術を用いた解決策の検討は、G空間情報センターが推進する「G空間社会」の理念とも親和性が高い。
 また、南砺市では地域の気象データを蓄積し農業に活用する取り組みや、公共施設の利用状況を可視化する検討、地域づくり協議会の境界データを用いた地域分析、市民発意のプロジェクトとしてはシニアカー安全・安心マップ作成プロジェクトも生まれている。これらの活動は、単なる技術導入ではなく、地域住民がデジタルを学び、使いこなし、地域の未来を自らつくる「デジタル市民(デジタル・シティズン)」の育成にもつながっている。

2.デジタル裾野協議会:スマートシティと地域DXをつなぐ取り組み

 トヨタが進める実証都市「Woven City」の立地自治体としてデジタルデータを活用した地域DXが進んでいる静岡県裾野市においても、南砺市と同様、2019年から市と東京大学が連携し地理空間情報を活用した地域課題の解決への取り組みを開始した。現在は地域団体や市民が運営する「デジタル裾野協議会」として活動している。

画像2:キヌア生産での耕作放棄地再生化計画(デジタル裾野)

 裾野市の活動では、トヨタの協力により富士山噴火シミュレーションデータを「デジタル裾野」に可視化した防災意識向上の取り組みやキヌア生産での耕作放棄地の再生化等の3Dデータ化など地域課題解決に向けた取り組み、またGPSデータを活用した観光動向把握など地域企業の課題解決に向けた取り組みも行なわれている。
 昨年は南砺市や広島県竹原市とともに合同会議を開催し、地域データの活用方法や市民参加型のデジタル推進のあり方について議論が行われるなど、地域を越えた連携の中で「裾野のデジタルコミュニティ」としての活動が形成されつつある。

写真1:合同推進会議(WOVEN CITY視察)

3.次はあなたのまちに「デジタル協議会」を

 南砺市と裾野市における取り組みは地域の立地や背景は異なるものの、共通して「デジタルを活用して地域の未来を共に創る」という理念を持つ。市民・地域団体・企業・行政・大学が対等な立場で議論し、地理空間情報を含む多様なデータを活用して地域課題を可視化する点は、他の地域自治体にも十分に汎用展開できるしくみだ。

 とはいえ、内包している課題もある。市政方針の転換や仕事の異動・個人都合に伴う参加者の入れ替わりなど、流動的な状況のなかでどのように活動を継続していくか。また、世代によるデジタル・リテラシー格差、ツールはあるのに使いこなせない利活用格差なども、参加者がどうしても限定的かつ特定属性への偏重となってしまうのは否めない。

 ただし、「デジタル協議会」のような活動は、地域DXの成功モデルとして全国に広がる可能性を秘めている。

 その理由は、デジタル技術は“目的“ではなく地域の未来を描くための”手段“だからである。

 個人的には、この時代を共有するさまざまな種類の人たちが、オフラインだろうとオンラインであろうと、「同じ場」で話し合うこと自体がもっとも大切な活動だと考える。
 デジタル南砺・裾野両協議会では、地域外の方の参加可能なオンライン会議「デジタル南砺(またはデジタル裾野)の輪」や市民公開シンポジウムも開催している。ご興味がある方は下記サイトをご参照いただきたい。なかなかこのような活動のきっかけが掴めないほかの地域の方々に、この記事が届き行動の後押しとなってくだされば幸いだ。

■関連サイト
 デジタル南砺協議会Webサイト・デジタル南砺(ダッシュボード)
 デジタル裾野協議会Webサイト・デジタル裾野(ダッシュボード)

執筆・編集:G空間情報センター 保坂志保

(2026年2月 メールマガジン掲載)

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