Wi-Fiパケットセンサーを活用したリアルタイム人流解析のご紹介

国際航業株式会社
事業統括本部
ロケーションサービス部 プラットフォームG
人流解析チームリーダー
渡邊 剛史(Tsuyoshi Watanabe)
国際航業ではこれまでに多くの人流計測の実績を保有していますが、その中でも一番多いのがWi-Fiパケットセンサーを用いた人流計測です。人流データと言うとスマートフォンアプリから位置情報を取得して多くの人々の位置情報を集めたもの(以下、人流ビッグデータ)のイメージをお持ちの方も多いかと思います。これに比べてWi-Fiパケットセンサーを使った人流計測についてはその宣伝を目にすることも少なく、初めてお聞きになる方もまだまだ多いのではないでしょうか?
私もいわゆる人流ビッグデータを用いた分析業務を行っています。具体的には、人流データベンダーから調達した移動軌跡データ(ポイントデータ)を元に、様々な工夫を凝らして人流データを利用できるデータに精製し、またそれを必要な粒度に集計し分析します。さらには、人流データベンダーが抱える課題の一つとしてデータソースとなるサンプルの枠母集団の偏りがあり、それを考慮して推計を行う必要もあります。ここで推計を誤ると結果がまるで異なるものになりかねない等、人流データの分析は複雑なものです。
さて、本題のWi-Fiパケットセンサーによる計測に話を戻しますが、本計測はWi-Fiアクセスポイントをセンサーとして設置して、Wi-Fiの通信確認を行うデータからその周辺のスマートフォン等の台数を数えることで周辺の人数とするという仕組みです。一般的にデータ提供元スマートフォンにはアプリが必要ですが、これにはアプリの必要がなく、原則的にはWi-Fi機能がオンの端末であれば検知します。皆さんがお使いのスマートフォンは周辺のWi-Fiスポットを自動的に探しており、その探す際に発する電波(プローブリクエストと呼ばれます)を検知して、人数を推計します。これまで弊社では、鉄道駅・空港・駅ビルや商業施設・スタジアム・公園・展示会場・団地の中の小さなイベントスペース・道の駅・商店街・自治体の各施設など、多くの場所において、この手法を用いた人流計測を行っています。これらの計測データを元に、例えば駅構内の混雑状況を10分ごとにリアルタイムに把握することや、デパートの催事場に足を運んだ方がどのような経路で来られたか、イベント有無によって通常とその場所の滞在時間の傾向が変わっているのかといった分析を行います。
この手法による人流計測の良いところをいくつか挙げておきましょう。
(1) リアルタイムにデータを取得してすぐに可視化できる。
(2) アプリが不要なため、比較的サンプルサイズが大きい。
(3) コンセント電源さえあれば、屋内外かかわらず設置が容易。
(4) 回遊、滞在時間、リピート分析ができる数少ない調査手法である。
(5) 実測値と照合すると相関が得られ、推計が行いやすい。

Wi-Fiパケットセンサーを用いた計測は、あくまでもセンサーを設置した場所の周辺50m程度(電波強度を用いて調整可能)にいた人を計測するものであるため、位置は明確にセンサーのある場所と言えます。また複数のセンサーを設置した場合には、センサーAで検知したXというスマートフォンがセンサーBにも検知された、というような移動傾向を捉えることができます。本手法では、GPSによる人流ビッグデータのように推定居住地や性別・年齢を知ることはできませんが、例えば2週間に何回その場所で検知したか、によってそのエリアに親和性の高い方(お住まいや通勤通学が近い)など、実は有益な属性見つけ出し、分析することができます。また、滞在時間が一定以上あった方のみを分析するとイベントの効果測定などで有効なこともあります。
この手法はランダマイズ化されたMACアドレス(プライベートMACアドレス)というWi-Fi利用時のスマートフォン等のネットワーク識別子(≒一定期間有効なID)を用いて分析しますが、取得後すぐにハッシュ化する(MACアドレスだとわからない他の文字列に変換して蓄積する)ことからプライバシーの配慮の面でも安心です。また、取得ログそのものを自社で保有できるため、自社で分析したい方にとっては良い点だと言えます。
Wi-Fiパケットセンサーを活用したリアルタイム人流解析は、これまで既存の人流ビッグデータのみを用いて人流調査を試していた方々にぜひ一度使ってみていただきたい手法です。弊社では他の手法も含めて最適なソリューションをご提供します。どうぞお気軽にお声がけください。
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(2025年4月 メールマガジン掲載)