エリアマネジメントの効果測定に資する技術紹介

株式会社 建設技術研究所
宇都宮 優喬
株式会社建設技術研究所の国土文化研究所インテリジェンスサービスプラットフォームでは、革新的な事業展開に必要な最先端ICT(AI、CPS、IoT、VR、ARなど)に関する基盤的テーマの研究開発を実施しています。今回、エリアマネジメントやイベント等の効果測定の支援を目的とした、技術開発・フィールド実験の結果をご紹介します。
1.研究開発の背景
歩行者の交通量や移動軌跡などのデータは、都市の再整備やまちの活性化計画を立てる際の基礎データとして活用されていますが、その調査や分析には多くの人員やコストが必要という課題があります。そこで、AI(Artificial Intelligence)の深層学習(Deep Learning)、勾配ブースティングなどを用いて、カメラ画像から歩行者の移動軌跡や属性などを計測するシステムを開発しました。また、現地でのフィールド実験を行い、エリアマネジメントの効果測定支援への適用性を検証しました。
2.研究開発の概要および実験フィールドへの適用
本研究では、エリアマネジメントの効果等の測定に資する技術開発を目指し、(1)移動軌跡計測・推定技術、(2)歩行者の属性判定、(3)人物の行動解析、(4)路上駐輪の実態把握に関する技術を開発しました。また、開発技術を実験フィールドに適用することで、本技術の有効性検証、課題整理を実施しました。
(1)移動軌跡計測・推定
本研究では、歩行者を広域的に把握するため、IoTカメラを複数台設置し、画像がラップするように撮影しました。人物検知は、YOLO公開モデルを使用しました。また、射影変換技術を使用することで、ローカル座標(撮影画像)からワールド座標(航空写真)に変換し、ワールド座標上で同一人物判定、勾配ブースティングによる軌跡の推定および軌跡の計測を行いました。
図1: 本研究開発手法の全体像
図2: 複数カメラを跨いだ移動軌跡の計測
(2)人物の行動解析
画像・映像情報を元に行動特性を分類し、行動解析を実施しました。行動特性別(ペット連れ、子供連れ等)の人数を把握できます。
図3: 歩行者の行動解析の例
(3)路上駐輪の実態把握
仮設駐輪場の利用状況と路上駐輪車数を画像・映像を元に分析し、路上駐輪の実態把握への適用性について検証しました。路上駐輪の場所や数を効率的に把握できます。
図4: 路上駐輪の利用状況把握の例
3.得られた効果
東京都中央区のオフィスと住宅街が混在する実フィールドを対象に実証実験を実施することで、その有効性を検証しました。結果として、複数カメラを跨いだ移動でも歩行者の移動軌跡が計測可能であり、広域の移動軌跡を計測できることがわかりました。加えて、歩行者の属性判定や行動解析技術などを活用することにより、エリアマネジメントの効果測定支援、都市の再整備やまちの活性化計画を立てる際の基礎データの高度化に貢献する可能性を示しました。
■本記事に関するお問い合わせ先
株式会社 建設技術研究所 本社 国土文化研究所
インテリジェンスサービスプラットフォーム 宇都宮 優喬(ytk-utsunomiya@ctie.co.jp)
(2024年11月 メールマガジン掲載)