地方公共交通の運用の効率測定を自動化するMaaS DXサービス

地域の課題解決に貢献する作品を表彰する「アーバンデータチャレンジ(以下、UDC)」において、商用サービスや学術研究にスポットを当てる「ビジネス・プロフェッショナル部門」。UDC2023の受賞者チームのプロジェクトを前編後編にわけて皆様にご紹介いたします。
後編の今回は、優秀賞を受賞した作品 「地方公共交通の運用の効率測定を自動化するMaaS DXサービス」!社会課題解決のポイントや今後の展開について、高知工科大学重山様よりご寄稿いただきました。
優秀賞
プロジェクト名:地方公共交通の運用の効率測定を自動化するMaaS DXサービス
高知工科大学
重山陽一郎
今回はUDC2023で発表/受賞したサービスを紹介する機会をいただき、ありがとうございます。この作品は、高知工科大学とNPOのシンギュラリティ・ソサエティで開発し、高知県内の自治体で運用中です。主にNPOでソフトウエア開発を行い、大学は、開発者と自治体の間に立ち、地域の課題を開発者に繋げる役割や、現場でのシステム構築と運用中のサポートなどの役割を果たしています。
図:システムイメージ
1.バスの乗降客数を簡単に取得
本サービスを運用中の高知県香南市では、他の多くの自治体と同様に市営バスの乗務員不足の問題が深刻です。その為、効率的運用を目指して3年に1度程度の路線再編を行っていますが、その根拠となる詳しい乗降客数データの収集は簡単ではありません。運賃の決済にSuicaなどの交通系ICカードを利用できればその乗降データを利用できますが、小規模な自治体ではSuica等を導入/維持する費用を負担できません。また、乗務員がバス停で乗降の度にメモすることも安全運転の妨げになる恐れがあります。その為、計測専任の要員を配置するしかなく、それも人件費を抑えるために1年間に14日間の計測が限度で、そのデータを元に年間の乗降客数を推測していました。そこで、簡単操作のスマホアプリと、背後でデータを自動処理・出力するサービスを開発しました。
このシステムでは、乗務員が操作するボタンは「乗」「降」の2つだけで、その他の情報(日付、時刻、位置)はスマホで自動取得します。更に、クラウドにてバス事業者と経路検索等の情報利用者との情報の受渡しの為ための共通データフォーマットであるGTFSデータ(バス停名称、路線、便)の統合とスプレッドシートへの出力も自動で行います。大部分が自動化され、高齢の乗務員でも対応が可能です。本サービス導入の結果、乗降客数データの取得対象日が年間14日から365日に大幅に増えたことで、データの精度が大きく向上し、データ収集の手間やコストも激減しました。
2.断面乗降客データの可能性
将来的に乗降客データが広域に入手できれば、断面交通量データ(JARTIC)のように「断面乗降客データ」が広く活用されると考えます。バス乗降に関する「位置、乗降数、時刻」のデータ形式を定義し、分析ツールも開発して社会に共有することで、ライドシェア事業者等がサービス提供を検討する際に役立ち得ると考えています。
3.今後の展開
本サービスは、香南市の他にも高知県内の2つの自治体で採用していただける予定ですが、高知県外にも広がることを希望しています。このメールの読者の皆様にも、ぜひ本サービスを利用/改良いただき、ゆくゆくはオープンソースとして公開したいと考えています。開発にご協力いただける方、開発者と自治体の間に立ち双方の意思疎通やサポートなどの役割を担っていただける方を募集しています。ご関心のある方は、info@singularitysociety.org にご連絡ください。
4.参考資料
本サービスの詳細はこちらをご覧ください。アプリを利用中の動画も閲覧できます。
(2024年4月 メールマガジン掲載)