森林・林業におけるG空間情報の活用

パシフィックコンサルタンツ株式会社
デジタルサービス事業本部情報事業部空間情報室
中村尚
日本は、森林が国土の3分の2を占めている緑豊かな国です。世界的にも重要視されているカーボンニュートラルを、日本では2050年までの実現を目指しています。令和3年6月に閣議決定された新たな「森林・林業基本計画」では、カーボンニュートラルを見据えた森林・林業・木材産業による「グリーン成長」が掲げられています。
特に森林資源の適正な管理・利用においては、現況を定期的に把握(モニタリング)した上で、長期に渡る森林計画から森林施業(伐採・造林など)の実施、それらの評価・検査から改善までのPDCAサイクルを実施する必要があります。人員・予算が限られる中での広域における定期的なモニタリングと長期のPDCAには、現況把握から森林管理の履歴にいたるまで、空中写真等のリモートセンシングや各種森林計画におけるゾーニングなどのG空間情報の活用が不可欠です。また、林業においては需要に合わせた生産から効率化、トレーサビリティの面でもG空間情報の活用が有効です。
図1.森林におけるG空間情報の例
現在、森林では、衛星から航空測量成果(空中写真・航空レーザ測量成果)、UAV(写真・レーザ)、地上レーザなど様々なデータが取得できるようになりつつあります。また、森林を管理する単位である流域界から各種ゾーニング、森林区分の最小単位である林小班、森林所有者の境界(所有界)などの行政情報のデータ化、クラウド技術を利用した共有化も進んでいます。一方で、それらをスケールと精度に応じて適切に組み合わせる活用化については、航空レーザ測量のデータがコストの面等から更新されていなかったり、高頻度に取得できる衛星データが十分に活用されていなかったりといった課題があります。
図2.森林管理におけるPDCAサイクル
グリーン成長を実現するための林業のスマート化・デジタル化については、情報のデータ化、関係者・関係機器間での共有化、データの解析・可視化、現場での利用、自動化といった必須の要素があります。林業では、リモートセンシングによるデータ化やクラウド技術による共有化が進みつつあるものの、データ量やコスト、通信の制限などの課題があります。解析・可視化や現場化については、実証試験としての取り組みが始まっている段階です。自動化については林業機械の自動走行などの研究はあるものの、実用化には至っていない段階です。
図3.林業におけるスマート化・デジタル化の要素
当社(パシフィックコンサルタンツ株式会社)では、森林管理や林業においてG空間情報を活用するための調査・検討の実施や各種ツール(各種システム、可視化ツール、解析ツール、モバイルツール)を用意しており、G空間情報を活用し、森林・林業に貢献していきます。
図4.森林・林業DXを実現するための各種ツール
■問合せ先
パシフィックコンサルタンツ株式会社 デジタルサービス事業本部 情報事業部 空間情報室 森林・林業DX関連業務窓口
Pckk_forest@tk.pacific.co.jp
(2023年5月メールマガジン掲載)