今見つめ直す、人流データの使い方


国際航業株式会社   
LBSセンシング事業部 ロケーションサービス部
渡邊 剛史



 コロナ禍における三蜜回避や各都市における混雑度の可視化などによって、人流データの利活用は広く普及し始めています。私はここ数年間に渡って、人流計測や人流データの開発及びそれらを活用した事業支援を行っております。弊社にお問い合わせを頂き私がお話を伺うお客様には、既に人流データを使った分析や人流計測をされている方が多い印象です。
 具体的には、店舗を支援する立場にある企業内マーケターの方、システム部門の方、新規事業を検討されている方、あるいは自治体のご担当者様など多岐に渡ります。
 そこでよく聞くのが、「人流データを使っているけど、“思ったような”数字が得られない」、そんな事例を一つご紹介させて頂きます。



1. 人流データの落とし穴?



 あるお客様では自社店舗のPOSデータ(レジ通過者数)と人流データとを比較されているそうなのですが、入手されている人流データがPOSでカウントした人数を下回っており、社内から「全然合っていないじゃないか」とのコメントを受けているとのこと。
 詳細なお話を伺ってみると、30坪ほどの店舗にBLEビーコンを設置して来店者数をカウントされていました。
 BLEビーコンとはBluetoothの電波を使ったセンサーの一種で、特に消費電力の少ないBluetooth Low Energyという規格を使用しています。中でも、Apple社の提供するiBeaconという規格が日本ではよく普及しています。

 一般にビーコンセンサーは一定間隔で周辺に電波信号を発信し、周辺を通りかかった人のスマートフォンが信号を受信できます。その信号にはビーコンのIDが含まれおり、ビーコンを設置した業者側では設置場所が分かっているため、どのスマートフォンがどこのビーコンの付近に存在するのか把握できる仕組みとなっています。
 スマートフォンにインストールされているアプリがそのビーコン設置業者のサーバーにデータを送り、それが蓄積され集計することで、どこに何人くらいの人がいるのかを推計するものです。ただし、取得した計測値そのものから実際に周辺にいた人数に推計することが非常に難しい為、誤差を含んでいることに留意が必要です。

 さて、ビーコンについてはここまでの説明にして、本題に話を戻します。
 確かに、ビル内の店舗だと屋内における位置測位が難しく、高さも分かりにくいGPSを用いた人流データよりも、よりエリアを絞ることができるWi-FiやBluetoothを使ったセンシングのほうが来店検知には良いでしょう。しかしここでは、ビーコンの検知率を考える必要があります。
 店舗来訪者の方のうち、スマートフォンを持っておりかつBluetoothが利用可能な方、そして更に、特定のアプリやSDK(ソフトウェア開発キット)がインストールされている人のみ検知対象になります。実際にはスマートフォンを複数持っている方がいたり、電波エリア内でも何かしらの事情で検知できないケースなどもありますが、ここでは話をシンプルにするために、この前述の店舗来訪者の条件の場合のみを考えてみます。
 スマートフォン所有者は90%程度いたとしても、来店時にBluetoothがONの人(これはわからないですが、)が仮に60%としましょうか、そして特定のアプリやSDKが入っている人が30%もいたとしましょう。この場合、0.9*0.6*0.3=0.162、つまり実際に来店された1,000人のうち162人(16.2%)だけが検知できます。
 これでもサンプル調査としてはそれなりに多い検知数(一度設置すれば自動的に毎日データが取得できるので、来店されたお客様にアンケートを取ることと比べればはるかに効率よくデータが得られます)ですが、もし購買率が30%の店舗でしたら、BLEビーコンから得られる人流データより多くの検知数がPOSにあることになります。
 もう一つ別な方法として、店舗の入口にAIカメラ等を設置して来店人数を計測するような手法の方が、より高い検知率かつ正確に把握できると考えられます。

 ここで改めてお伺いしたいのですが、人流データをマーケティングに取り入れようとされている皆様が求めるべきものは、この“思ったような”来客数1,000人を人流データで正しく推計することなのでしょうか?本当に知りたい情報は、お客様はどこから来ているのか、リピーターなのか、滞在時間は…など、こういった情報を集めて店舗や商品の改善を検討・実施することではないでしょうか?
 そして、その改善実施で得られる効果がどのくらいの価値・効果があるのかを予測し、そのうえで人流データのご導入を検討されることが、本来お客様の求める答えを導き出すものと考えます。



2.国際航業が提供する人流データ活用のソリューション

 弊社国際航業では、前述のような事例を回避し、お客様の真の目的に則したソリューション事業を展開しております。




 この図は、弊社が提供するソリューションの具体的プロセスイメージです。お客様の事業課題に対して人流データがどのように役立つのかを考え、最適な人流把握手法を選定します。その上で独自に開発した「Wi-Fi人口統計データ」を用いたり、Wi-Fiセンサーを活用した人流計測を行ったり、あるいはパートナー企業のソリューション(AIカメラや)を組み合わせたご提案をさせて頂きます。既に人流計測や人流データをご活用頂いている方も、いま改めて人流データの使い方を考え直して頂くきっかけとなれば幸いです。



■関連情報
 全国の人流オープンデータ(G空間情報センター)

 国際航業の人流計測・人流データ活用ソリューション

 お問い合わせメールアドレス:dynamicdata@kk-grp.jp



■告知
 国際航業はCEATEC2022に出展します!
  ・幕張メッセ会場: 2022年10月18日(火)~21日(金) 午前10時~午後5時
  ・オンライン会場: 2022年10月1日(土)~31日(月)

 ※参加費無料(全来場者登録入場制)
  入場には「CEATEC 2022公式ホームページ」からオンラインでの事前登録が必要です。
  ぜひ、当社ブースにご来場ください!皆様のお越しをお待ちしております。



(2022年9月メールマガジン掲載)