UDC2021「ビジネス・プロフェッショナル部門」最優秀賞受賞:荒川3D河川管内図 Arakawa Digital Twin Online/河川管理情報プラットフォームの構築

 地域の課題解決に貢献する作品を表彰する「アーバンデータチャレンジ(以下、UDC)」において、商用サービスや学術研究にスポットを当てる「ビジネス・プロフェッショナル部門」。UDC2021の受賞者チームのプロジェクトを3回のシリーズで皆様にご紹介しています。
 
 最終回となる今回は、最優秀賞を受賞したチーム、国土交通省関東地方整備局荒川下流河川事務所から、「Arakawa Digital Twin Online」による社会課題解決のポイントと効果についてご寄稿いただきました。

最優秀賞
プロジェクト名:Arakawa Digital Twin Online -荒川3D河川管内図 河川管理情報プラットフォームの構築-


国土交通省 関東地方整備局
荒川下流河川事務所 事務所長 早川 潤

 荒川下流河川事務所(以下、当事務所)は、三次元データを活用した河川管理の取り組みを進めており、全国に先駆けて、荒川下流域のデジタルツイン(建物や道路などのインフラ、経済活動、人の流れなど、フィジカル空間(現実空間)の様々な要素をサイバー空間上に再現するもの)構築の運用方針を策定し、荒川3D河川管内図を公開しました。
 「Arakawa Digital Twin Online 荒川3D河川管内図 



 全国の河川事務所では、河川工事の図面や洪水浸水想定区域図(洪水ハザードマップの元となる図)をはじめとする様々な河川管理情報を取り扱っています。これまでの河川管理情報は、2次元の平面図で表現されているためうまく伝わらなかったり、人によって理解に差が生じたりすることがありました。また、河川法手続きの際に必要な河川区域・河川保全区域などの情報がWebサイト上で一般公開されていないために、河川事務所へ電話、または、直接来所しなければならないことも少なくありませんでした。

 当事務所では、河川の流域にお住まいの方等の関係者(流域関係者)に寄り添った行政サービスの変革に取り組んでおり、その第一ステップとして、この河川管理情報をWeb GISプラットフォーム上に一元化し、3次元でわかりやすく表示するデジタルツイン環境を構築・公開しました。

 これにより、インターネット等を通じ、誰もがいつでもどこからでも河川管理情報を閲覧できるようになりました。特に、洪水浸水想定区域、重要水防箇所といった重要度の高い防災情報や河川法に定められている許可申請手続きに関する情報など、流域関係者の皆様が求める情報を視覚的にわかりやすく表示しています。

 さらに、情報を見られるだけでなく、容易に実データを取得し利用できるオープンデータ化も進めており、当事務所HPに「荒川下流GISオープンデータポータル」を開設し、BIM/CIM活用の設計業務成果や地形データ、航空写真などのデータを公開しています。

 最近では、荒川3D河川管内図を活用した行政手続(一時使用届※)の受付も開始しました。これまでは業務時間内に庁舎にきていただいて紙の書類を提出いただくかFAXや電話でやりとりしていた届出手続きがwebのオンラインフォームでいつでもどこからでも届け出ることが可能になっただけでなく、事前に工事個所や他者が届出をした箇所を把握できるようになり、行政サービスの向上につながっています。

※一時使用届・・・マラソンイベントや防災訓練などで河川敷を使用する場合に必要となる届出のこと。

図 マラソンコース(青線)と工事個所(赤)

 ここまでご紹介してきたように、荒川3D河川管内図は、河川事務所と流域関係者の情報共有プラットフォームとして様々な場面で活躍しています。UDC2021の審査会においてプレゼンを行った当事務所の倉田紘平さんのような若手職員のアイディアをスピーディに実現し、行政サービスの向上、河川管理業務の高度化・効率化につなげています。

 荒川3D河川管内図というWeb GISプラットフォームは、アイディア次第でさらなる活用が期待できます。今年度は、荒川DXプロジェクトとして、デジタルツインの実現、BIM/CIMモデル活用、メタバース活用、AI活用、オープンデータ活用促進を進めて参ります。オープンデータ活用促進プロジェクトでは、オープンデータの拡充とともにユースケースの募集を行っていきますので、荒川下流のオープンデータを活用した皆様のユースケースをお待ちしております。
 新たな可能性を秘めた河川管理のDXにご期待ください。

お問い合わせ先:国土交通省 荒川下流河川事務所 流域治水推進室 03-3902-3220
荒川3D河川管内図へのご意見・ご要望: 利用者アンケート
ユースケースのご提供先:ユースケース収集フォーム

(2022年6月メールマガジン掲載)